あらすじ
突然、科学者が相次いで不審な死を遂げる事件が発生。
事件を追っていくうち、謎のVRゲーム、視界に差し込まれるカウントダウン、重要人物の過去がこの事件に関わっている事が分る。
始まりは中国、大文化革命のころ、父を殺された娘は後に軍事天文台にスカウトされた優秀な科学者となった。
文革によって抱える娘の傷と確執はやがて一つの結論にたどりつく。
地球外に送られたメッセージから始まる異星人とのコンタクトは以後数百年をかけて人類と異星人の運命、三体世界における宇宙との対決が描かれる。
シリーズの主軸は三部作
三体シリーズはまとめて五部作存在している。
基本的には三体シリーズの中核となるシリーズ三部作を読むのが良いのではないか。
(スピンオフや前日譚は独立した作品としてとらえたので未読であると断っておく)
三体
第一作、三体世界とのファーストコンタクトとそこに至るまでの経緯が描かれる。
発端が文化革命である事、事件のキーポイントが文革の影響という点で”中国大陸からのSF小説”らしさのような物が存分に楽しめる
VRゲームという舞台も現代的でユニークなアイデア。
本筋がサスペンス劇の仕立てながらも周辺のアイディアのユニークさがSFらしさを高めている。
三体2 黒暗森林
前作で三体文明との接触と対決が明らかになったところ、その対処のために世界が動き出した。
対決には面壁者というキーマンが選び出され、大きな権限を与えられる。
(問題解決のために強力な権限という点はどこかヘイルメアリーのようだ)
主人公は面壁者の一人でありながら、なぜ選ばれたのかが不明という。他の面壁者が立てる計画やアイディアの失敗が明らかになっていく中で生まれる結論がみどころ。
作中の女性像に批判があるが、それをおいても数百年かけて生み出される地球世界の混乱と変化や面壁者のもたらす対決のアイディアは読んでいて飽きない。最終的な結論は三体シリーズ屈指の読後感の良さがある。
とくに、三体文明によって地球は技術発展に制限を与えられてしまった中でいかにして戦うかというアイディアはSFにありがちな凄い技術と凄いオブジェクトで凄い事を起す、という展開をいきなり破壊してしまった。
テクノロジーではない解決法、暗黒森林理論はネタバレになるので調べずに読んで欲しい。
といっても、三体シリーズが与えた影響の大きさでもあるが、暗黒森林理論はすでに有名な物となってしまっているから三体を読んでいなくても知っているインターネットユーザーも存在しているかもしれない。
三体3 死神永生
シリーズ第二作の発端と同時期に発生したプロジェクトとその顛末が物語の主軸。
人間を三体文明に送り込むというプロジェクトは、暗黒森林以降に起きる人類の命運の鍵となる。
黒暗森林をへて、三体文明との対決は宇宙との対決でもある事が明らかになる。
第二作で大きくなったスケールがさらに拡張され、作者の作る壮大な宇宙観が魅力であると同時に三体シリーズが全体を通して根底に抱える問題”相互に克服する意思”と”悪意”を感じずにはいられない。
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三部作から離れるスピンオフも二作
三体0 球状閃電
未読。三体の前日譚らしい。
三体X 観想之宙
未読。三体シリーズ三作目のある人物を中心にした公式スピンオフ。
三体のファンが書いた二次作品が原作者公認の下で展開されたという経緯があり、三体3完結後にファンが書いた二次創作群のなかでも特に特別な立ち位置にあった作品とのこと。
感想―三体シリーズはおススメなのか? 間違いなく面白い。
SFの面白さを、作品世界に出てくるアイディアだとすると間違いなく三体はその点で最強と言っても良い作品ではないかと思う。
一作目は地球外生命体とのファーストコンタクトを描く小説として楽しめると同時に、”中国大陸で生まれたSF”がどういう物か? というどこか観光めいた面白さもある。こと文革シーンについては本国でも傷を負った歴史という立ち位置らしいと感じる。
中国という国が舞台になることもあって、国家関係の描かれ方も影響がありそうだ。 アメリカがあんまり役に立たないし。
三体2は特に、暗黒森林理論を生み出したという点でSF作品の中でも特に重要な立ち位置にあるように思う。
そのうえで、暗黒森林理論について密告社会と表現する事も共産主義国家にある仄暗い警察組織や支配構造を思わせられると同時、暗黒森林理論によって相互確証破壊によって担保される関係は維持可能なのかという疑問も呈されているように思う。
もっとも、三体において相互確証破壊は常に互いが致命的な手段を維持し続けることが前提となっている。
そこに緊張緩和は相互理解による融和が無かったことは作者の思想によるものか分からない物の、三体3を読了した時の喪失感と合わせて、三体シリーズは暗い世界のSFだと感じさせられてしまうが、死神永生(死だけが永遠に残る)という虚しさと描かれる結末に向かって描かれる描写が美しくも感じる。
物語の気持ちよさでは三体2まで読んで欲しいと思うと同時、三体2を読んだなら三体3も読む絶対に読んだ方が良い。
とはいえ、三部作で三体2と三体3は上下巻構成にあるとおりボリューム感としてはかなり重い。
また描写においても読みにくさを感じる場面が少なくないし、女性描写についてはどちらかと言えば欠点よりの特徴がある。
その上で三体シリーズはアイディアとストーリーは類を見ない物であり、読むだけの価値がある。
ドラマ化している三体シリーズ
三体はドラマとして実写化されている。テンセントとネットフリックスによってそれぞれ独自に解釈してドラマを作っている。
(ただし、当ポストの筆者としては……テンセント版は未見だと断る事になる)
ネットフリックス版においては、作中世界の時系列に従う形で三体1の内容を主軸にしつつもシリーズ全体の内容、三体2と三体3の内容についても一部分ではあるが同時に展開されていく。
個人的にはワイヤーによる船体三枚おろしが映像化された点は結構嬉しい。映像化されたときは絶対に見たいと思っていたシーンだ。
その他にも人列コンピューターも映像化されている。
映像化された各シーンについては全体的に高く評価したい一方で、登場人物が整理されているほか人物の人種が多様になっている事には少し違和感が生まれそうではあるが、人間ドラマとしては見やすくなっている。
一方で映像化するに至って説明不足感を感じる事も少なくない。面壁者や階梯計画についても描かれるが、原作シリーズを通して読んでいないとやや意味が分かりにくいかもしれない。
細かいところで言えば人列コンピューターのシーンは映像では何をやっているか一切語られず、人間を利用したコンピューターとして一言三言語られるにとどまる。原作ではより詳しく描写され、冗談みたいなアイディアが冗談としてしっかり描かれている。
第1シーズンが公開された段階でありながら、シリーズ三作を時間軸にそってすべて平行して扱うことで未完の問題が多く提示されてしまている形だ。ドラマの完結まで何年掛かるだろう?
もちろん、同時にすべて扱っておき、いいとこ取り的に映像化を行うのは一種のファンサービス的な面もあるのかもしれない。
三体が気になっているが、読むかどうかの判断を保留しているなら先に実写版を視聴して流れを把握したうえで原作小説の入り口にするのも良いかもしれない。
三体はアークナイツ副読本として押さえたい小説
三体シリーズを進めるにあたってはあるゲームのユーザにもお勧めしたい小説となっている。
こと三体シリーズは中国でも有名であり、後発や同時期の作品にも影響があるように思えるからだが、特にアークナイツは特に三体シリーズのアイディアの影響があるように思えるからだ。
アークナイツの舞台となる星では一定高度で宇宙との間に壁が存在している事、文明を存続させるために古い時代においていくつかの計画が同時進行し、多くが不完全な結果に終わったらしい事はどここか三体シリーズの角となるアイディア、面壁者や低速ブラックホールによる文明の隔離と隠匿を彷彿とさせる。
そして、文明に終局をもたらす外因の存在と外宇宙を往来するテクノロジー、単一の星にのみ生命が存在しているわけではないらしいアークナイツ世界は、三体3シリーズの宇宙観が文脈にあるような気配を感じるのだ。
なので、アークナイツの今後のシナリオも大変楽しみである。(と同時にやや不穏さも感じるが)
とにかく、アークナイツのシナリオにおいて特にSF要素が好きだと感じるプレイヤーにはぜひ三体シリーズも読んで欲しいと思う。
三体シリーズはかなりの文量があるが、アークナイツのシナリオを読み進めているなら読書に臨む体勢は出来ている。
逆に、三体ファンにもアークナイツは……大変かもしれないが面白いゲームで、シナリオの分量や設定、いまだ未完のシナリオだが、触れてみても良いかもしれない。
アイキャッチ画像出展:S. Korotkiy CC BY-SA 3.0 RT-70 radio telescope